コロナ禍で退職?健康保険には退職前に知っておく準備があります。

3つの道

コロナ禍で生活が大きく変わる中、これから勤務先を退職する人が増えるかもしれません。企業に勤めているかどうかで健康保険が変わります。退職後の健康保険の選択肢は3つありますが、手続きの締切が14日以内や20日以内と早いです。退職する前から制度や保険料を把握しておきましょう。

1. 退職した翌日から20日以内でないと選べない「任意継続」

日本は国民皆保険であり、全ての人が何らかの健康保険に加入しなければなりません。
企業にお勤めの方は、企業を通じて健康保険に加入しています。

ということは…。
企業を退職した後はどうなるのでしょうか?

企業を退職した後の健康保険については3つの選択肢があります。

  • 自営業などの人と同じ国民健康保険に加入する。
  • 会社勤めの家族の健康保険の扶養に入る。
  • 退職前の健康保険に入り続ける(任意継続制度を利用する)。

選択肢は3つあるのですが、3番目の任意継続制度は、退職日(資格喪失日)から20日以内に手続きしなければなりません

したがって、選択肢が3つあるのは退職から20日までということになります。

また、国民健康保険は締切りが14日までです。
14日を過ぎても加入手続きは出来ますが、医療費の給付が行われない期間が発生します(手続きするまで)。
健康面を考えれば14日までに国民健康保険への加入を決定すべきです。

【参考】全国健康保険協会(協会けんぽ):会社を退職するとき
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat315/sb3070/r147/

一番お得な選択肢は、まずは「家族の扶養」です
被扶養者であれば、保険料の負担が無いからです。

家族の扶養に入れるかどうかは過去記事があります。

コロナで収入減。扶養になれるか?社会保険について解説(パート主婦編)
社会保険の被扶養者となると、社会保険料の負担をしなくて済みます。被扶養者として認められるかどうか要件の一つが「収入」です。じゃあ、パートでの収入が減ったら夫の「被扶養者」になれるのか? 理屈の上ではなれますが、実務の上では「すぐに」といかな...
コロナで収入減。扶養になれるか?社会保険について解説(一般編)
サラリーマンなどに扶養される人には保険料の負担がありません。このような被扶養者として認めらえるかどうかには条件があります。収入は年間130万円未満であることや、一定の続柄にあることなどです。収入減になったらすぐに誰かの扶養に入れるかは場合に...

国民健康保険と任意継続制度とでは、条件次第でどちらがお得とも言い難く…。
以下で説明していきます。

なお、高額療養費の多数回該当については、加入している保険が変わると通算されません。
現在、高額の治療費を負担している人は「変えない」メリットも考慮しましょう。

2. 任意継続制度のメリット・デメリット

任意継続制度とは、勤め先の健康保険に任意で引き続き加入する制度です。

任意継続制度では

  • 勤め先の健康保険に、退職する日までに2か月以上継続して加入していて
  • 退職した日の翌日から20日以内に申請すると
  • 退職日の翌日から2年間、引き続き同じ健康保険に加入できます

    やたら「2」が出てくる点、FPの受験テキストでも指摘されてますw

2.1 任意継続制度のメリット:「安いこともある」「扶養」

メリットは、「家族の扶養が認められる点」と、「保険料の上限がるので安いこともある点」です。

家族の扶養が認められるということは、加入者一人分の保険料で、被扶養者の保険料負担がないということです
扶養家族のいる人にはお得でしょう。

家族の扶養を届け出る手続きは以下のとおりです。

【出典】全国健康保険協会:2.申請に必要なもの
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3180/sbb3180/1985-6169/

任意継続制度での保険料は以下のように決まります。

保険料は、勤めていた間企業が負担してくれていた分も含めて、全額負担となります(勤めていた時の約2倍となります)

これだけ見ればデメリットなのですが、保険料には上限があります。
令和2年現在のざっくりとした目安は30万円×約10%=3万円/月でしょう。

根拠は、任継続被保険者の保険料は、以下のaかb2つの金額のうち少ない方で計算することによります(協会けんぽの例を挙げておきます)。

  • a 退職時の標準報酬月額
  • b全ての協会けんぽの被保険者の標準報酬月額の平均額

令和2年の「全ての協会けんぽの被保険者の標準報酬月額の平均額」は、30万円とアナウンスされています。

協会けんぽの保険料率は都道府県によって異なりますが、平均が約10%なので、ここでは10%と考えます。
なので、30万円×10%=3万円/月であり、年間36万円となります。
(これが国民健康保険料(税)とどちらが安いかは、後述しますが場合によります)

【出典】全国健康保険協会(協会けんぽ):平成31年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g1/h31-1/310110001/#:~:text=%E5%B9%B3%E6%88%9031%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7,%E5%86%86%E3%81%AB%E5%A4%89%E6%9B%B4%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

ご自身の場合の保険料は、加入している健康保険での「被保険者の平均」「保険料率」を基に計算してみてくださいね。
(別に担当部署の人に聞きにくくなければ、ずばり「自分の任意継続被保険者としての保険料はいくらですか?」と質問すると正確です)。

2.2 任意継続制度のデメリット:「高いこともある」「給付が減る」

デメリットは、まず「誰かの扶養に入る(保険料負担なし)」選択に比べると、保険料の負担がある点です。
上限があるとはいえ、まとまった金額を給与収入が無いのに負担するのはツライところです。

所得の高い人は任意継続制度の上限に助けられて負担がそれほどでないケースもありますが。
所得があまり高くない場合、そのまま勤務中の倍額の保険料となってしまいます。
国民健康保険料については後述しますが、安い自治体であったり減免制度の利用を考慮したりすると、国民健康保険の方が任意継続よりお得なこともあります

また、勤務中に受けられたものに比べて、給付内容(補償内容)が狭くなります
病気や出産で休業した時に支給される「傷病手当金」「出産手当金」はありません(退職したのですから休業もしないわけで…)
※ただ、退職前にこれらを受け取っていた人が引き続き受け取ることができることもあります

【参考】全国健康保険協会(協会けんぽ):6.任意継続被保険者の保険給付
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3180/sbb3180/1980-6174/
資格喪失後の保険給付
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31714/1946-279/

また、一度任意継続制度を選択すると、「国民健康保険に加入するから」「家族の扶養に入るから」という理由で任意にやめることはできません。
もっとも、他の健康保険に入ったとか、保険料を納付しなかったりすると、任意継続制度の資格は無くなります。
「やめる」というか「やめさせられる」というか…。ともかく資格は無くなります。
(納付しなかった場合は納付の翌日から資格を失います)。

【参考】全国健康保険協会(協会けんぽ)
3. 被保険者期間
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3180/sbb3180/1982-6170/
4.任意継続被保険者の資格喪失
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3180/sbb3180/1983-6171

ある健康保険組合のサイトでは、「任意継続制度の保険料未納なら国民健康保険や扶養を選べますよ」とアナウンスされています。

【参考】A社の健康保険組合
http://www.nttkenpo.jp/asp/faq/faq.asp?articleid=419categoryid=9

3. 国民健康保険制度の概要

日本は国民皆保険だと書きました。
企業に勤めている人は勤め先の健康保険に加入し、これを被用者保険といいます。
どの被用者保険にも入れなくても、その地域の住民を加入者とする地域保険=国民健康保険に加入することになります
国民健康保険は、最後の受け皿のような役割を果たしています。

保険料の決まり方はややこしく、自治体によって異なります。
自治体によって格差があることが問題視されており、厚生労働省の調査では3.4倍の開きがあるとされています(自治体ごとに制度が違うので、厚労省の方で比較しやすいようデータを調整してあります)。

【出典】厚生労働省:平成29年度市町村国民健康保険における保険料の地域差分析 https://www.mhlw.go.jp/content/000590979.pdf

3.1 国民健康保険のデメリット:「高いこともある」「家族分かかる」

あなたの場合がどうなるかは、自治体に問い合わせるのが正確です。
自治体によっては、自治体のサイトでシミュレーションできることがあります。

たまたま目安を公表している自治体によると、国民健康保険料は所得に応じて年間3万円弱から50万円強に分かれることがわかります。
(自治体によって異なりますし、収入と所得の関係も人によります。ご自身の場合は必ずお住まいの自治体の情報を確認しましょう)

【参考】A市の国民健康保険料の目安
https://www.city.atsugi.kanagawa.jp/shiminbenri/totokezei/kokuho/kokuho/hokenryou/d034136_d/fil/meyasuhyou.pdf

国民健康保険には「扶養」という考え方がなく、家族の分もそれぞれ納付しなければなりません
扶養家族がいるひとは、家族全体でいくら保険料の負担があるのかを比較する必要があります。

なお、大手企業の健康保険組合も、任意継続か国民健康保険か、保険料についての比較のポイントを説明してくれています。

【参考】大手企業B社の退職後の健康保険についての解説
https://www.toyota-groupkenpo.jp/wordpress/wp-content/uploads/004.pdf

3.2 国民健康保険のメリット:「安いこともある」「減免措置がある」

先に保険料の原則を3.1で述べました。
この原則通りでも、所得によっては任意継続より保険料が安くて済む人もいます。

加えて、国民健康保険には減免制度があります
調査によれば、約6割の人が減免制度を利用しているそうです(出典はこの記事の最後尾に載せてあります)。

退職した=失業した人向けの措置もありますし、所得が低い人向けの減免措置もあります。
2020年にはコロナで収入が減った人向けの施策もあります。

詳しくは改めて記事にしますが、これらの減免措置を利用すれば保険料の負担が軽減されることもあります。

退職後の健康保険を選択する場合には、ご自身が支払う国民健康保険料についても金額を把握しておきましょう。

【参考】公益社団法人 国民健康保険中央会:保険料(税)について
https://www.kokuho.or.jp/summary/national_health_insurance.html
【参考】厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少した被保険者等に係る国民健康保険料(税)の減免に対する財政支援について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000620361.pdf

まとめ

コロナ禍で経済的な打撃が懸念されます。
残念ながら勤務先を退職せざるを得ない場合もあるかもしれません。

日本は国民皆保険なので退職しても何らかの健康保険に加入しなくてはなりません。
選択肢は3つですが、任意継続は退職の翌日から20日以内なので、それまでに決断を迫られます。

退職後、家族の勤め先の健康保険に扶養家族として認められれば、保険料の負担がなくて済みます。

任意継続か国民年金保険のどちらの保険料が高いかは場合によります。

任意継続には「扶養」が認められる点、家族がいる人にはメリットが大きいでしょう。

国民健康保険は自治体ごとに違いが大きいので、ご自身の自治体でどうなのかを確認しましょう。
国民健康保険には減免制度がありますので、これも加味して考えましょう。

なお、国民健康保険で減免制度を利用している人が約60%という根拠は以下の調査によります。

【出典】厚生労働省「平成29年度国民健康保険実態調査報告」
17頁に「保険料(税)を軽減されている世帯は59.3%」の記述あり。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450397&tstat=000001125095&cycle=8&tclass1=000001125099&stat_infid=000031794123&cycle_facet=tclass1%3Acycle

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