マクロ経済スライドとは? 年金が物価ほどには増えにくくなる仕組み

ねんきん

年金制度にからんでよく聞く「マクロ経済スライド」。字面だけでは何を指しているのか分かりづらいですよね。これは、良くも悪くも少子高齢化で年金財政が危機に陥らないための仕組みで、発動されると給付額の上昇が抑えられます。2020年度については1月下旬に発表予定です。

1. 支出を抑えるための仕組み

すっごく大雑把に言えば。
年金は、現役世代の保険料(+国庫負担と運用益)で、高齢者への給付を行います。

ですが、少子高齢化が進む中。
マクロに見れば、収入は減少するのに給付は膨らんでいく状況です。

だから、給付額を抑制することで、最低でも年金財政の危機を避けようとしているのです。

↓厚生労働省のサイトの説明は以下のとおりです。

収入の範囲内で給付を行うため、「社会全体の公的年金制度を支える力(現役世代の人数)の変化」と「平均余命の伸びに伴う給付費の増加」というマクロでみた給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組みを導入したのです。この仕組みを「マクロ経済スライド」と呼んでいます。

【出典】厚生労働省:一緒に検証!公的年金
https://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/finance/popup1.html

2.「マクロ経済スライド」が実施されたりされなかったり?

厚生労働省の説明では「自動的に調整」とありますが。現役世代の数は減って平均寿命は延びているので、要は「自動的に『下げるよう』調整」ということです。

この調整率をスライド調整率といいます。

計算には、「公的年金全体の被保険者の減少率の実績」「平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」が用いられます。
まあ、マイナスの数値にはなりますよね…。

とはいえ、物価や賃金の変化の中で実際に給付を受けている高齢者も保護しなければなりません。

この釣り合いで「マクロ経済スライド」が発動されたりされなかったりということが起きるのです。

2.1 物価や賃金上昇で年金が上がるときには実施

物価や賃金上昇しているときは、年金額もそれに合わせて上昇します
この時には、「マクロ経済スライド」が実施されます。

本来年金が1%上昇する場面で、スライド調整率が0.4%だと、その年の年金は差し引き+0.6%です。

物価や賃金が上昇しているのですが、年金の上げ幅は小さくなります。

2.2 発動されても年金額には下限あり

スライド率が0.4%だとします。
ところが、物価や賃金などから年金の上昇率が0.3%のとき。
単純に0.3-0.4=-0.1としてしまうと、年金給付額(名目額)が前年を下回ってしまいます。

この場合、前年度の名目額が下限となります。
マイナスにはならないよう、スライド調整率は0.3と限定的になります。

スライド調整率によって、年金給付額が前年度より下回ることはありません。

2.3 物価や賃金下落で年金が下がるときには実施されない

スライド調整率で年金給付額が前年度を下回ることはアリマセンが。
物価や賃金次第では、年金支給額が前年度を下回ることはあります。

このように物価や賃金の下落で年金給付額が下がった場合、追い打ちをかけるようにスライド調整率で下げることはありません

この年は、「マクロ経済スライド」が実施されないことになります。

2.4 実施されなくても「キャリーオーバー」

実施されないと、長期的に見て年金財政にはよくありません。

年金額の下落に追い打ちを掛けられなかった年は仕方ないとしても。
実施しなかった分は次に実施できる年に持ち越されます(キャリーオーバー)

2018年度は「マクロ経済スライド」が実施されず、2018年分の調整率0.3%がキャリーオーバーされました。

2019年度は賃金・物価の上昇については、+0.6%となりました。
そして、2019年度のスライド調整率は0.2%。

すると、2019年度は+0.6から、2019年度のスライド調整率0.2%を引き、さらに18年度のキャリーオーバー分0.3%を引きます。
結果、0.6-0.2-0.1=+0.1%となります。

「物価や賃金上昇ほどには、年金の受給額が増えない」という「マクロ経済スライド」の仕組みが明確になった年でした。

2018年、2019年についての部分は以下のサイトを参考にしています
【参考】大和ネクスト銀行:年金給付額が抑えられる ? 2019年実施の「マクロ経済スライド」の中身
https://www.bank-daiwa.co.jp/column/articles/2019/2019_194.html

「マクロ経済スライド」そのものの説明はここまでです。

3.2021年からは現役世代の賃金を反映

「マクロ経済スライド」の説明は2までです。
この3では、2021年からの制度の変更点の説明を添えておきます。

「マクロ経済スライド」以前の問題として、年金額は物価や賃金の上下を反映すると述べました。

2020年現在は、新規裁定者(受給し始める人)は賃金、既裁定者(受給している人)は物価の変動に合わせることが原則です。
ただ、この原則は例外が多くて多くて…。
詳しくは下記の厚労省のサイトをご覧ください。

2021年からは、物価変動よりも賃金変動を年金額に反映させることとなります。
これは、現役世代の負担能力、つまり現役世代が受け取っている賃金を考慮するということです。

「物価が上昇しても賃金が下落した」「物価下落より賃金下落が大きい」年度で、賃金の下落に合わせることになります。

【参考】日本年金機構:まとめQ. そもそも、年金額はどのようなルールで改定されるのですか。
https://www.nenkin.go.jp/faq/jukyu/kyotsu/gakukaitei/201805-8.html

まとめ

「マクロ経済スライド」は、長期的な年金財政の危機を回避するため、収入の範囲内で給付をやりくりしようとするものです。

制度が瓦解しては元も子もないので、致し方ないのですが…。

また、2021年の変更でも、物価よりも賃金を反映する方針が徹底されることになっています。
ここでも、現役世代からの保険料の範囲内でやりくりすることになっています。

今後、物価の上昇ほどには、公的年金は増えないのはツライところ。

ただ、少々形骸化しかけているとはいえ、一応、物価や賃金などを反映させることを前提としているのは、私的年金にはない公的年金の強みです。

今後は従来ほどあてにはできないかもしれませんが、あればあったで心強いものです。
今後はパート労働者などにも範囲が広がると予想されますが、該当するようになったら悪いことばかりでもありません。

期待しすぎず、不信を募らせ過ぎず、冷静かつ正確に老後資金の中の公的年金を理解しておきましょう。

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