老後に受け取る遺族年金。「え?貰えない?」と驚かないために。

眼鏡

私(アラフィフ)の母は「夫の遺族年金」を貰っています。この世代はそれなりの金額を貰える人も多いですが…親世代の「年金暮らし」のイメージが通用しないこともあります。社会や個人の生活の変化などが背景にありますが、いざ老後になって「貰えない」「少ない」に慌てないために、今から制度を理解しておきましょう。

1.「遺族基礎年金」はあまり老後と関係ありません

年金制度は、会社勤めの人の場合、「基礎年金」と「厚生年金」の2階建てです。
老齢給付では老齢基礎年金と老齢厚生年金が受給できます。

ところが、遺族年金については少しイメージを切り替える必要があります。

遺族基礎年金は原則18歳までの子どもがいる人向けの制度です。
18歳よりも子供が大きくなると、遺族基礎年金は無くなります。

最近は高齢出産も増えましたが、それでも遺族基礎年金については子どもがいる間に貰えるもので、老後とは年齢的にはあまり関係ないものとイメージしておいた方がいいでしょう。

※基礎年金ではなく、条件を満たすと厚生年金から中高齢寡婦加算が受け取れます。
2階建ての年金制度の2階部分である老齢厚生年金の他に、1階部分に近い扱いで受けられるものです。

中高齢寡婦加算では、夫を亡くした子のない妻が65歳になって基礎年金を受給するまで40歳から65歳の間受け取れます。
また、子どもが18歳を超えて遺族基礎年金が受給できなくなった人も65歳まで支給されます。

中高齢寡婦加算の金額は遺族基礎年金の額の4分の3です。

2.一生貰えるはずの「遺族厚生年金」が貰えない?少ない?

遺族厚生年金は条件さえ満たせば、原則一生受給できます。
私たちの親世代では、「夫の遺族年金」を生活の大きな柱としている人も多いでしょう。

ところが。
この条件に注意が必要なのです。

細々した条件はいろいろあるのですが、この記事では「誤解されがち」かつ「誤解したままだと不利益を被る」ものを2つご紹介したいと思います。

2.1 原則として厚生年金に25年加入する必要があります

受給要件には、大雑把に言えば在職中に死亡したケースを想定したものと(短期要件)、長く勤務した人を想定したものがあります(長期要件)。

老後=夫の老齢厚生年金を受給していて、夫を亡くして遺族厚生年金を受け取る場合は、長期要件が問題となります。
下記のリンク先↓の日本年金機構の支給要件の「2.老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき」にあてはまるかどうかです。

【参考】日本年金機構:遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html

私たちの親世代だと、終身雇用で夫が25年以上サラリーマンだったということは普通でした。
今でも満たす人は多いかもしれませんが、25年経たずに独立して自営やフリーランスになった人は、老齢遺族年金は貰えなくなる恐れがあることを十分に注意しましょう

下記の日本年金機構のQ&Aでも注意が呼びかけられています。

「受給資格期間が10年以上25年未満で決定された老齢厚生年金を受けている方が亡くなられたときは、遺族厚生年金を受けることはできませんのでご注意ください」

【出典】日本年金機構:Q. 老齢厚生年金を受けている夫が亡くなりましたが、妻の私は年金を受けられますか。
https://www.nenkin.go.jp/faq/jukyu/kounen-kyufu/izoku-kousei/20140421-03.html

ここで「あれ?年金の受給資格って10年じゃなかったっけ?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
それは老齢厚生年金を本人が受給する場合です。

もともと年金の受給資格期間は25年だったのを、老齢給付については2017(平成29)年に10年に短縮したものです。
遺族厚生年金は25年のままなのです。
(2017年の件については、記事末に日本年金機構のリンク先を掲示しています)。

2.2 「報酬比例部分」の4分の3相当額です

「遺族年金は夫の年金の4分の3」と見聞きした方もいらっしゃるかもしれません。
これを正確に知らないと、実際に遺族年金をもらおうとした時に「あれ?少ない」と驚いてしまいます。

正確には「厚生年金(報酬比例部分)の4分の3」です。
夫が基礎年金と合わせて受け取っていても、その基礎年金は4分の3の対象ではありません

【参考】日本年金機構:遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html

夫の加入歴によっては「経過的加算」「経過的職域加算」というものが、夫への老齢給付に加わります。

「経過的加算」は基礎年金に近い性質を持ち、遺族年金の対象ではないようです。
下記のリンク先で専門の先生が解説していらっしゃいます。

【参考】一般財団法人年金住宅福祉協会:おじいちゃんが死亡、おばあちゃんには、
いくらぐらいの遺族年金がもらえるのか?
https://kurassist.jp/nenkin-kouhou/vol60/pro-lecture/pro-lecture-01.html

「経過的職域加算」は公務員などの共済組合に加入歴があった人の場合に支給されることがあるものです。
これ自体の説明はここでは省きます。
また、共済組合ごとに細かく異なります。

「国家公務員」「地方職員」「私学共済」のサイトを調べてみましたが、経過的職域加算を遺族年金の対象とするのは(少なくともこの3つの共済組合は)共通しています。

ただ、長期要件での支給での金額は、組合員期間や死亡時期によって調整されるとの記載もあります(この数字が共済組合によって異なります)。
正確には各共済組合に問い合わせるのがよいでしょう。

【参考】国家公務員共済組合連合会:遺族共済年金(経過的職域加算額)
https://www.kkr.or.jp/nenkin/zenpan/seido/ichigenkago/keika/izoku.html
【参考】地方職員共済組合:経過的職域加算額
https://www.chikyosai.or.jp/division/long/occupational.html
【参考】日本私立学校振興・共済事業団:経過的職域加算額(遺族共済年金)
https://www.shigakukyosai.jp/nenkin/gaiyo/shibou/shibou02.html

3.これから増えそう。自分が老齢厚生年金をもらえる場合

女性の社会進出が進み、女性自身が企業で厚生年金に加入していたために、自分自身が老齢厚生年金を受け取るケースも増えてくるでしょう。

とはいえ、女性が働くようになってからの期間が短く、夫の方が収入が高いために、夫の遺族厚生年金の方が高いケースもまだ多いと思われます。

自分の厚生年金も貰える、夫の遺族年金もあるという場合はどうなるでしょうか。

この場合、まず自分の厚生年金を受給します。そして、大雑把に言えば、遺族厚生年金との差額分が遺族厚生年金から支給されます

この遺族厚生年金の計算方法は、日本年金機構のサイトでは以下のように説明されています。

(※)遺族厚生年金の額について
遺族厚生年金の受給権者が死亡した方の配偶者である場合、その遺族厚生年金は、
1.亡くなられた方の老齢厚生年金額の3/4
2.亡くなられた方の老齢厚生年金額の1/2+ご自身の老齢厚生年金額の1/2
の2通りの計算方法があり、いずれか多い額が支給されます。
【出典】日本年金機構:遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)「65歳以上の遺族厚生年金の受給権者が、自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html

これは2007(平成19)年に大きく改正があり、金額の計算方法も異なりますのでその点ご注意ください。

まとめ

まず、「遺族年金」のうち、遺族基礎年金は子どものいる親についてが基本です。

親世代が「夫の遺族年金」を生活の柱としている場合、その「遺族年金」は遺族厚生年金などであろうかと思われますが、これも現在のアラフィフ世代にそのまま当てはまるとは限りません。

親世代は終身雇用が当然で、気にするまでもなく「25年間の受給資格期間」をクリアしていたかもしれません。
しかし、今どきは夫の働き方も多様化しています。
遺族年金には25年間の受給資格期間があることに留意しておきましょう(10年と言うのは老齢給付です)。

また、いわゆる「4分の3」というのは、厚生年金の報酬比例部分について、です。
夫の基礎年金は含まれません。
(公務員などの経過的職域加算については正確な情報は各共済に確認しましょう)。

今後増えていくケースは、女性自身に老齢厚生年金があるという場合でしょう。
とはいえ、女性の社会進出の歴史は浅く、女性自身の老齢厚生年金が夫の遺族年金を上回るケースはさほど多くないかもしれません。
その場合、夫の遺族厚生年金との差額は給付されます。
(2007(平成19)年までの制度とは変更があります)。

自分の老後は、つい親世代を参考にしがちです。
ただ、そのまま参考にしてしまうと「貰えない」「少ない」と驚くことになることもあります。
今回はその中でもよくある誤解で知っておくべきことについてご説明しました。
老後資金を考えるお役に立てれば幸いです。

なお。老齢給付の受給資格期間が10年になった点は以下のとおりです。

【参考】日本年金機構:必要な資格期間が25年から10年に短縮されました
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2017/20170801.html#:~:text=%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E8%80%81%E9%BD%A2%E5%B9%B4%E9%87%91,%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

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