給与(額面)から手取りを計算する方法。8割という目安は何が根拠?

スーツの男女

4月から新年度。今年から新社会人となったり転職したりして、お給料について気になる人も多いでしょう。額面の金額と手取りの額とは異なっていることをご存知の方も多いと思いますが、その計算はどうすればいいのでしょうか。目安とされる8割前後というのは何を根拠としている数字でしょうか。

1.「手取り」とは「額面」から税と社会保険料を引いたもの

「手取り」「額面」も公的な定義があるものではありませんが。
通常は、「額面給与」の金額とは「勤務先から支払われた金額全て」をさし、「手取り」とは「額面から税金と社会保険料を差し引いた額」をさします

税金も社会保険料も納付するのが義務です。
この義務としての金額を引いた後の金額を「手取り」といいます。
自分が自由に使えるお金ということで「可処分所得」とも言います。

通常はこのような意味で使いますが。
法的根拠がはっきりしているわけではないので、正確さが必要な場面では相手に確認しておきましょう。

2.比較的若い人なら「手取りは額面の約8割」

額面から手取りを計算するのに「約8割」という表現もあります。
うーん、比較的年収が低めの人に当てはまるかな、と思います。
どう計算するか見ていきましょう。

2.1 社会保険料は額面の約15%

社会保険料は額面を分母とする率が分かりやすいです。
社会保険料は「収入の何パーセント」と決まりますが、この「収入」がほぼ「額面」と同じものを指すからです(微妙に違う点もあるかもしれませんが、税ほど乖離は無いのが普通です)。

社会保険は「年金保険」「医療保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つです。
↑率が大きい順です。

「労災保険」は、従業員は保険料を負担しませんから0円です。
「雇用保険」は、負担しても普通は賃金の0.3%です(企業が0.6%負担して全体では0.9%)

「介護保険」は40歳から徴収が始まります。
決まり方はややこしいのですが、協会けんぽのアナウンスでは令和2年度は1.75%とされています。

大きいのは年金保険と医療保険です。

企業勤めの人が加入する厚生年金保険は、原則として、18.3%を労使折半し、従業員の負担は9.15%です
ただ、勤務先が福利厚生に手厚いと、労使折半ではなく6:4で負担するようなところもあります(知人が数字が合わないので問い合わせたら人事の人にそう言われたそうです)。

医療保険は加入先によります
中小企業の場合、「協会けんぽ」という医療保険に加入します。
この保険料率は都道府県によって違います。
平均してざっくりした数字を上げるなら従業員の負担は5%くらいでしょう。

大企業だと独自の健康保険組合があり、従業員の負担が小さいこともあります

このように概算すると、年金9.15%、医療約5%(仮)、介護(40歳から)2%弱、雇用0.3%、労災0%です。
合計すると、介護を抜いて約14.45%程度となります(介護を入れると16.45%です)。

【参照】
厚生労働省:平成31年度の雇用保険料率について
https://www.mhlw.go.jp/content/000484772.pdf
全国健康保険協会(協会けんぽ):介護保険の令和2年度保険料率について
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/direction/dai102kai/20200129_05.pdf
日本年金機構:保険料額表(平成29年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-gaku/gakuhyo/20170822.html
全国健康保険協会(協会けんぽ):令和2年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3130/r2/20207/

2.2 税金は額面から直接はわかりません

税金について、額面に対する割合は、実際に計算してみないと分かりません
額面給与額と、課税対象額とは異なるからです。

まず、給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得が決まります。

給与所得から、各種所得控除を差し引いて課税対象所得額が決まります。

例えば、20代くらいの若い人でどうでしょうか。
令和元年の調査結果によると、大卒初任給は21万2000円です。

【参考】令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/19/01.html

切りよく22万円とすると、額面の年収は22万×12カ月=264万円です。
ボーナスは人それぞれですが、年間で36万円出るとして、この人の年収を300万円だとします(考えやすくするために仮に設定する数字です)。

給与所得控除はこの年収だと「収入金額×30%+80,000円」なので、98万円が認められます。
給与所得は300万-98万円=202万円です。

所得控除は最低でも基礎控除というものが認められます。
2020年現在普通は48万円です。

受けられる所得控除が基礎控除だけだとすると。
課税対象額は202万円-48万円=154万円です。

この課税所得だと所得税は5%です。
なので、所得税は154万円×5%=7.7万円です。

税には住民税があります。
話を簡単にするために所得割について考えると、これは税率10%です。
なので、住民税(所得割)は154万円×10%=15.4万円です。

このケースでは納税額は所得税と住民税を合わせて23.1万円です。
300万円の額面年収に対する率は7.7%となります。

以上は、大卒の若い世代で、基礎控除のみというケースでした。

所得控除は基礎控除以外にもあり、認められると課税対象額が小さくなります。
例えば、「勤労学生である」とか「扶養する家族がいる」とか、ふるさと納税や個人型確定拠出年金(iDeCo)などしていると所得控除が受けられます。

一方、所得が高くなると所得税率が上がります。
住民税の所得割はそのまま10%ですが。

大卒で入社し、給与が上がれば納税額が上がる要因となり、所得控除の対象が増えると納税額が下がる要因となります
税率は課税所得で決まるので、額面年収に対する率は実際に計算してみないと何とも…です

先のように、大卒間もなく平均的な賃金をもらっていて、基礎控除のみというシンプルなケースで7.7%でした。

社会保険料が15%弱、税が8%弱(これも個人差があります)
これを足して概ね2割。
よって、手取りは8割といわれているのです。

【参照】
国税庁:No.1410 給与所得控除
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1410.htm
No.1199 基礎控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm

No.2260 所得税の税率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

3.手取りを増やす裏ワザ?

図書館で「手取りを増やす裏ワザ」という、わりとそのまんまのタイトルの本を読んだことがあります。
ここでご紹介しないのは、発行年が古いからです。
社会保険と税については毎年のように改正がありますので、あまり古い情報はそのまま受け取らないようにしましょう

その本でもそうでしたが、手取りを増やす方法は「社会保険料と税金の負担を減らすこと」です

税については比較的いろいろあります。
社会保険料は、もし可能なら心がけておくといいこともあります。

3.1 税を減らす「所得控除」

上述しましたが、課税対象額を低くするのが所得控除です。

扶養家族などを勤め先に届けることで、配偶者(特別)控除、扶養控除などが受けられます。
生命保険などに加入したらそれも勤務先で所得控除されます。

ふるさと納税や個人型確定拠出年金(iDeCo)は自分で手続きをすることで所得控除が受けられます。

医療費がかかった年や災害で損害を被ったときなども、税の負担を減らす所得控除が受けられます。

住宅ローンなどで「税額控除」が受けられることもあります。

何らかの認められた方法を活用することで「節税」は可能です。

以下の過去記事も参考になさってくださいね。

「○○控除で税がお得になる」ってどういうこと?納税額の決まり方
年末調整や確定申告に向けて「税をお得にする裏ワザ」などの情報があふれる季節です。ここでは、表面的な「裏ワザ」だけでなく、もともとの課税の仕組みをご説明します。これを知ると、いわゆる裏ワザも理解しやすくなり、さらにご自分に最適な節税方法も見つ...

3.2 残業の時期をずらすと社会保険料が節約になることも

社会保険料、中でも割合の高い年金保険と医療保険は、正確に言うと額面給与そのものではなく、それらを何段階に分けた標準報酬月額で決まります。

この標準報酬月額は4月~6月の残業代を含めた収入を基に決定されます。
なので、4月~6月まで残業を避けることができるなら、標準報酬月額の等級が下がり、社会保険料が下がることもあります

ただ、社会保険料が少ないと、老後に貰える年金も少なくなるおそれもあります。

そもそも、このように社会保険料の節約目当てで残業を調整しても大丈夫かどうかは職場によると思いますが…どうでしょう?

健康保険については過去に記事にしています。

勤め先の健康保険料の額ってどう決まる?4月から6月は残業しない方がいい?
1. 勤め先で加入する健康保険 日本は国民皆保険で、必ず公的医療保険に加入しています。 よく、そうではないアメリカ社会と比較されることがありますね。 公的社会保険があるので、日本では平等に医療が受けられます。 勤務先が企業である...

まとめ

4月から新生活。
お給料について「額面」「手取り」という言葉が気になる時期かもしれません。

額面から社会保険料と税を引いたものが手取りです。

おおよそ8割といわれています。
社会保険料は額面収入の約15%です。
税金については本当に個人差が大きいのですが上記の若い人の例で8%弱です。

税については所得控除など、税に詳しくなることで節税も可能です。

社会保険料については、残業の時期をずらすと当面の保険料を下げる効果はあります。
ただ、将来の年金のことや、そもそも残業の調整が可能かどうかも考える必要があります。

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