医療保険はいらない?不要論を信じていいのか徹底検証

病院

「人生100年時代」と言われますが、その間ずっと健康だと楽観はできません。病気に備えるために医療保険の加入を検討する人も多いでしょう。一方「医療保険は必要ない」という意見も見かけます。アナタの場合はどちらでしょう?

1. 専門家で「医療保険はいらない」という人も多いです

長生きするとなると、その間に病気になることが心配ですよね。
そう考えて、民間の医療保険に加入する人も多いです。

一般社団法人生命保険協会によると、2018年度新規契約数が最も多かったのが医療保険でした。

【出典】生命保険協会「生命保険の動向(2018年版)」
https://www.seiho.or.jp/data/statistics/trend/

医療保険が24.5%で最多、次が終身保険で20.5%、以下定期保険、ガン保険、養老保険と続きます。

FPなどの専門家でも、もちろん医療保険を勧める人もいます。

ただ、ネットや書籍では「医療保険はいらない」とする主張もあります。
まあ、常識を覆す主張なので目につきやすいのもあるのかもしれませんが…。

だからといってキワモノではありません。
前提となる条件を満たせば、確かに民間の医療保険は必ずしも入らなくてもいいケースもあります

2. 不要かどうかのチェックポイント

「医療保険はいらない」という主張には、それぞれ前提となる事実があります。

これらを確認したうえで、アナタの場合はどちらかを考えてみましょう。

2.1 医療費自体は高額療養費制度で上限があります

みなさん、「健康保険証」をお持ちですよね?
日本は全ての人が公的な医療保険の加入者です。

勤め人なら勤め先の被用者保険(健康保険や共済組合)、自営業など勤め先に公的医療保険がない人は地域保険(国民健康保険)に加入しています。

加入者本人とその家族(被扶養者)は、「健康保険証」を使うことで、原則3割の自己負担で医療を受けられます。
(未就学児や高齢者で2割以下の場合もあります)。
病院に掛かるたびに窓口で支払うのが、この自己負担額です。

この医療費の負担額には上限があります。
天井知らずに高額になることはアリマセン。
これが「高額療養費制度」と呼ばれるものです。

この高額療養費制度の上限額は、その加入者の収入(標準報酬月額)によって異なります。

現役世代で多いのが、年収370万円から770万円(標準報酬月額28万円から50万円)のパターンではないでしょうか。

このケースでは、自己負担の上限は「8万100円+(医療費-26万7千円)×1%」です。

大体8万円+αで済むことが多く、医療費自体が10万円を超えることはあまりありません

さらに。
医療費の支払いが長期にわたる場合に、負担額をより軽くする仕組みがあります。
「多数回該当」と呼ばれる制度で、過去12か月以内に3回上限額に達したら、4回目から上限額が下がることになっています。

今取り上げている「標準報酬月額28~50万円」のケースの人なら、多数回該当となると4回目から4万4千円となります。

場合によっては、世帯で合算できる場合もあります。
70歳未満では自己負担額が2万1000円を超えることなど条件が厳しいので、当てはまる人は少ないかもしれませんが。
一応頭に入れておいてくださいね。
70歳を超えると合算の条件はゆるくなります。

「民間の医療保険はいらない」という主張の大きな根拠の一つが、「高額療養費があるので医療費自体が際限なく高額になることはない」というものです

たとえ大病を患っても、一月10万円弱、4ケ月目から5万円弱と考えると、「それくらいなら貯蓄で備えておいた方が良い」という選択肢も十分アリなのです。

ただ、高額療養費にも後で述べるように、いくつか注意点はあります。
「収入が高い人は上限も高い」「月をまたいで合算できない」「差額ベッド代や食費は対象ではない」などです。

2.2 会社員なら休業補償があります

病気になったとき、「仕事を休んでいる間の収入がなくなるのでは?」と心配の人もいるかもしれません。

この点について。
会社員なら、勤め先の公的医療保険から休業補償が受けられます。

病気やケガで連続して3日以上休み、給料ももらえない場合
概ね休業前の3分の2にあたる金額の傷病手当金が1年6ケ月間もらえます

私の手元の社会福祉の専門書によると、医療が発達していなかった時代だと、被用者保険は医療のためというより、むしろ働き手の所得保障という性格が強かったとあります。

【出典】「初めての社会保障 福祉を学ぶ人へ」有斐閣アルマp.20

この専門書にもありますが。
自営業が「生産手段」(収入を得る手段)を自分で持っており、家族で助け合って生活できるのに対し。
勤め人の収入源は自分の労働力の提供しかありません。

だから、社会保険は勤め人に手厚く整備されてきました(マルクス主義とかの時代です)。

今となっては勤め人の社会保障の手厚さに比べ、自営業やフリーランスが手薄に感じられるかもしれません。

昔ながらの自営業で、本人が療養しつつも家族の手を借りながら事業が営めれば特に備えは考えなくても大丈夫でしょう。

そうでない場合には、民間の保険を考えるべきケースもあるかもしれません。

ただ、近年は、それを「医療保険」で備えるのではなく、「休業して収入が得られないこと自体に直接備える」保険が出てきました
「就業不能保険」や「所得補償保険」と呼ばれるものです。

従来の医療保険は、病気の入院日数に応じて保険の給付があるケースが多く、大病=入院という時代のものです。

後で述べるように、現在は入院せず、通院治療が推奨されています。
ですから、入院給付で休業中の保障のとするのは、社会の変化と合わなくなっています

就業不能保険、所得補償保険は比較的新しい保険で、まだ成熟してない面もあるかもしれませんが。
自営業やフリーランスの人で、長期の療養での収入が不安だという人は検討してみてもいいかもしれません。

2.3 保険は理由がないと給付金がありません

医療保険は、はじめに契約した理由に該当しないと、保険の給付がありません
その多くは、入院したり手術をしたりした場合に支払われるものです。

近年は医療機関でも、入院を避けて通院で治療する方針です。
となると。
入院しないと給付が出ない医療保険から、給付を得られるケースは少ないことになります。

仮に月3000円の保険料を40年間支払うとします(12×40=480月)。
保険料の支払総額は3000円×480月=144万円です。

単純に考えると入院日額1万円の医療保険なら144日入院しないと「元が取れない」ということになります。
医療保険は1入院について60日や120日などの支払い日数の限度がありますから、これにも制約されます。
(細かくはそれぞれの契約内容によります。また、保険料に応じて節税でお得になる面もありますので、事情は人それぞれです)。

「元がとれない」ということは、それだけ健康だったということで喜ばしいのですが…。
金銭面では支払損ということになります。

支払損をするなら、その保険料(上記のケースで144万円)を貯蓄した方が良かった、ということになりますね。

貯蓄しておけば、医療費だけでなく、住宅費や老後資金にも多目的に使えます。

「医療保険はいらない」立場からすると…。
「使い道が限られていて元が取れるかどうか分からない保険」を購入するくらいなら「自由に使える貯蓄」をした方が良いということになります。

もっとも。
保険会社の方も、「入院を基本とした医療保険は使い勝手が悪い」「医療が入院から通院主体になってきた」という問題に手をこまねいているわけではありません。

ごく最近、がん保険で通院治療を対象にしたものなども出てきましたし、2019年には「日本初のおくすり保険が発売」と報道されもしました。

【出典】メディケア生命:日本初!通院時代の「おくすり保険」新発売!
https://news.medicarelife.com/release/down2.php?attach_id=376&seq=1

とはいえ、2019年現在、これらは目新しい存在ですので…。。
今後の動向が注目されます。

3. 医療保険の加入を検討するべき人は?

では、医療保険に加入するかどうか検討すべき人はどのような人でしょうか。

3.1 高額療養費制度の落とし穴

高額療養費は、収入の高い人については上限も高くなります

何段階かありますが、上記の例より1段階高い人の区分は「年収約770万円~約1160万円」(標準報酬月額53万~79万円)です。
この場合、高額療養費の上限額は「16万7400円+(医療費-55万8000円)×1%」です。
多数回該当でも9万3000円となります。
これより高所得だとさらに上限額は高くなります。

また、高額療養費は月をまたいで合算できません
各医療機関から医療保険(健康保険組合など)への請求などの事務手続きの関係で、どうしてもそうなってしまうと厚生労働省からも説明があります。

【出典】厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000161153.pdf

一カ月の上限が8万円+αであっても。
同じ月で10万円の医療費がかかった場合の支払いの上限は8万円+αで済むのですが。
たとえば今月5万円で来月5万円と月をまたいだ場合。
それぞれの月での上限内ですので各月5万円ずつ、計10万円払わなければなりません。

また。
社会保険の財政は厳しく、収入のある人には相応の負担を求める傾向にあります。

2018年には「現役並み所得がある高齢者」について、高額療養費制度の改正(改悪?)がありました。

それまでは、70歳の現役並み所得者は全て、世帯の医療費の上限(外来・入院)は、「8万100円+(医療費-267,000円)×1%」でした。
先に挙げた一般的な年収帯の人と同じですね。

ところが、2018年の8月から、70歳以上の高齢者にも、それ以上の所得があると現役世代と同じ上限額となりました。
つまり、年収約770万円~約1160万円の人だと「16万7400+(医療費-55万8000円)×1%」です。

高額療養費制度そのものがなくなるとは考えづらく、何らかの形で「収入に比べて医療費の負担が大き過ぎることを防ぐ」制度は残るでしょう。
ただ、どの程度の収入ならどの程度の負担になるか、今後厳しくなっていく可能性も高いです。

3.2 貯蓄では間に合わない場合

社会人になりたてなどの若い人では、まだ貯蓄が十分ではない人が大半でしょう。
貯蓄もないのにまとまった医療費の支出は痛いですよね。
このような場合には、医療保険で備えておきましょう。
幸い若くて健康な人は保険料も安いですしね。

先に述べたように収入が高い人は高額療養費の上限も高いです。
収入が高いから医療費だって出せる…とも限りません。
住宅資金や教育費がかかる年代と重なってしまうと、医療費の負担がツライ時期もありえます
この時期の分だけでいいので、医療保険に入っておくという選択もアリでしょう。

3.3 ニーズに合った保険が見つかった場合

先も述べたように、入院保障主体の従来の医療保険は使い勝手が悪かったのですが。

がん保険や一部の医療保険で、必ずしも入院を伴わない保険商品もポツポツ出てきました。
また、療養中の収入が心配なら「就業不能保険」「所得補償保険」なども登場しています。

変わったところでは「先端医療」「臓器移植」に備えるという保険商品もあります。
これらの医療は「滅多に起こらないが、起こると多額の費用がかかる」ものです。
起こる確率が低いために、「安い保険料を多くの人から集めて、たまたま不運にも必要が生じた人に高額の保険給付ができる仕組み」となっています。
これも、保険料と自分の気がかりを秤にかけて検討してみてもよいでしょう。

もっとも、これらの新しい時代のニーズに応える保険は、まだ登場して日が浅いものが多いです。
当サイトでも最新の情報を発信して行きますが、他のサイト様も含めネットなどで情報を収集して判断されるべきだと思います。

3.4 心理的に不安な人

「医療保険がないと不安」「安心して闘病できない」という心理的な理由も、もっともだと思います。

私の実の父のお話を紹介したいと思います。

私の実父は長患いの後で亡くなりました。
実母がしっかり保険を掛けていたので、入院日数に応じて給付金が出ました。
それを父が冗談めかして(関西人なので)「儲かったでw」と申しておりました。

決して、それまでの保険料の総支払額と比べて儲かったわけではなく。
「その入院の費用については、その入院に対する給付金で賄えて黒字になった」という意味だと思いますが…。
父にとっては「〇日入院した分、□円貰えた」という事実が、闘病中のささやかな楽しみだったようです。

実父くらいの高齢なら十分貯蓄もあって、そちらからも賄えたでしょう。
それでも。
貯蓄を取り崩して一方的に目減りするだけなのも、精神的にツライかなあ…と思います。

病気になる前に安心したい、闘病中も何らかの給付金が欲しいという心理的な理由も十分検討に値します。

保険料の支払総額より得をする可能性はあまりなくても、安心や楽しみを手に入れたい人には医療保険もアリです。

ただ、実父の時代は資産と言えば「貯蓄」オンリーな人が多い時代でしたから。
値動きは上下しますが、投資商品などで資産運用することが当たり前になると、心理的な感じ方も変わってくるかもしれません。

4. まとめ

結局どうするか。
上で述べてきたような「医療保険不要論」の根拠となる事実を踏まえて判断することになります。

公的医療保険(高額療養費制度や傷病手当金など)の恩恵を受けられるなら、高額の医療保険は不要です。
また、医療保険の保険料を支払うために貯蓄が不十分となるのは避けましょう

無難な選択としては。
「若くて保険料が安いうちに、シンプルで安価な保険に加入しておく」ことでしょう。

ライフプランを立てて、住宅費や教育費が膨らむ時期があるなら、それに備えて若くて健康な間に加入しておくのも大切です。

一つ加入しておけば、社会保険(公的料保険)の今後の動向に過剰に怯える必要もなくなりますし。

医療保険選びのポイントは安くてシンプルなものを選ぶ点です。
営業の人が進めるからと言って、仕組みが分かりにくい保険を選ぶ必要はありません。
保障の内容もシンプルにして、見直ししやすいものにしておきましょう。
将来的に、時代の変化に合った商品が登場し、自分のニーズと合致するなら、その都度検討していけばよいでしょう。

一方で。
何らかの理由で今後医療保険に入れない人(持病を抱えてしまった人など)には、「それほど悲観しなくていいですよ」と申し上げたいですね。

貯蓄を頑張っていれば、必ずしも医療保険に入っておかなくてはならないわけではありません。
世の中には、保険料を損にする人もいっぱいいます。

健康な人も持病のある人も、出来る範囲で自分のニーズに合わせて過ごせばそれで十分です。
(損害保険などでは早急に必要な保障を準備すべき場合もありますが)。

そもそも医療のお世話にならないよう、健康的な生活を心がける方が大切ですよ。
私も、仕事が終わったら、近くをウォーキングして参りますw

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