コロナで退職後無職なら。確定申告で税金が戻る3つの可能性

確定申告イメージ

2020年、コロナ禍のために退職を余儀なくされた方もいらっしゃるかもしれません。年の途中に退職し、その後に再就職しなかった人は確定申告が必要です。そして、確定申告をすれば税金が返ってくる可能性が高いです。その理由をご説明します。

1.「退職金」そのものは確定申告不要が原則ですが…

退職するにあたって退職金を受け取った場合。退職金については、他の給与等とは税の扱いが別です(分離課税)。

退職金とは、その企業に長い間貢献してきたことに対して酬いるために一時的にどーんと支払われるものですし、老後の生活資金となるものです。月々のサラリーとは性格が異なります。

ですから、退職金については普通の給与所得とは別に税金を計算します。
非課税枠が大きいなど税の負担が軽くなるような計算式です(具体的には3.3で述べています)。

通常は退職金を受け取るときに「退職所得の受給に関する申告書」(以下「申告書」)を勤め先企業に提出しているはずです。
すると、退職金から、退職金独自の計算をした正しい税額を源泉徴収してくれています。
ですから、申告書を出していれば退職金に関する確定申告は不要です。

以上が原則です。しかし、この「申告書」を出していない場合は、退職金から多めに源泉徴収されてしまうことになっています。
ですから確定申告で取り戻せる可能性があります。これは3.3でご説明します

【出典】国税庁:退職金と税https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm

[手続名]退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_37.htm

2.年の途中での退職は原則確定申告だと考えましょう。

会社勤めの方には自身が確定申告した経験がないかもしれません。

ただ、日本では「申告納税制度」が原則です。税を納めるべき人は確定申告をするというのが原則なんです。

じゃあ、なぜ会社勤めの人はしないで済むのか? それは、会社が毎月の給与から税を源泉徴収し、1年を通じた精算を年末調整で確定させてくれるからです。

退職しても12月までにでどこかに再就職をすれば、その再就職先で年末調整してくれます。下記のとおり、国税庁からもそう説明があります。

中途退職した同じ年に再就職をした場合は、原則として新しい勤務先で前の勤務先の給与を含めて年末調整をすることになっていますから、所得税の納め過ぎは解消します。

【出典】国税庁:No.1910 中途退職で年末調整を受けていないときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1910.htm

しかし、年の途中で退職して、その後12月まで再就職していない人は確定申告しなくてはなりません。
この人は、退職するまで月々源泉徴収で所得税を納めているのですが、その後の状態(収入減、社会保険料の負担など)に応じた本来の納税額に調整する機会がないのです。

そして、確定申告すれば、大抵の場合は税金を納めすぎている可能性が高いので、税の還付を受けられる可能性が高いです。
以下で考えられる3つの可能性をご説明します。

3.税金を納めすぎとなる3つの可能性

サラリーマンは毎月(1月からです!)給与から税金が源泉徴収されています。退職金からもです。
この計算が本来の納税額とズレていれば納めすぎた税金は還付されます(3.1と3.3でご説明します)。

また、退職後も社会保険料を納めているはずですが(減免などになっていない期間)、その全額が課税対象から外れます。
ただ、企業に属して年末調整してもらう機会がないなら、その計算も自力で確定申告する必要があります。
そうすれば、納税額が小さくなります(3.2でご説明します)。

3.1 在職時に給与から税金を納めすぎていた可能性

所得税は1月1日から12月31日までの1年間の所得にかかるもので、12月31日時点でないと正確な税額は分かりません。
しかし、サラリーマンは1月分の給与から所得税を源泉徴収されています
2020年の税額は2020年12月にならないと分かりませんが、2020年1月から既に月々の給与から源泉徴収されているのです。

月々の源泉徴収税額は「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」で定められています。
私が手計算で検証してみましたが、限られた前提で算出されたやや高めの金額です。
その前提の中に「その月の給与が年間を通じて変わらなければ」というものがあります。

源泉徴収税額の決まり方については、過去に記事にしております↓。

確定申告の還付の理由。そももそも源泉徴収はなぜ納めすぎなのか?
サラリーマンが一定の理由で確定申告をすると税金が還付されます。なぜなら、年間を通じた月々の源泉徴収税額が「払い過ぎ」になってしまうからです。では、そもそも源泉徴収税額とはどう決まるのでしょうか。この記事では「税額表がそうだから」より踏み込んで検証してみます!

在職中に毎月納税していた源泉徴収税額が「その月の給与が年間を通じて変わらなければ」という前提ですから、これに変化があれば税額も変わります。

年の途中で退職して無収入になった場合は、年間の所得も小さくなり、本来の納税額も小さくなります。
再就職して年末調整してくれる勤め就職先が見つからなければ、自力で確定申告しなければなりませんし、すれば納めすぎた税金が還付されることになります。

3.2 社会保険料控除など所得控除で、税金を安くできる可能性

所得税の税額は、課税対象所得に所得税率をかけて決まりますが。
その課税対象の所得からその納税者の個人的な事情に応じて一定の金額を差し引くことができます。これを所得控除といいます。

所得税額が決まるプロセスについては過去に記事にしております。

「○○控除で税がお得になる」ってどういうこと?納税額の決まり方
年末調整や確定申告に向けて「税をお得にする裏ワザ」などの情報があふれる季節です。ここでは、表面的な「裏ワザ」だけでなく、もともとの課税の仕組みをご説明します。これを知ると、いわゆる裏ワザも理解しやすくなり、さらにご自分に最適な節税方法も見つ...

課税対象となる金額が減るので、所得税額も少なくなります。
マネー系の情報で「税がお得になる裏ワザ」としてよく紹介されているのはこの所得控除であることが多いです。

在職中の源泉徴収税額には「基礎控除」と「社会保険料控除」「扶養控除」は”その時点の前提では”考慮されています。
しかし、先ほどから繰り返すように「年間通じて変わらなければ」という前提で、しかもそれを12カ月で割った額ですから、年度途中で退職して無収入となれば数字は変わってきます。

また、民間の生命保険や地震保険に入っていれば、毎年秋ごろに会社に届け出ることで年末調整で「生命保険料控除」「地震保険料控除」を受けていらっしゃったかと思います。
年末調整する勤め先企業が無い場合は自分で確定申告することで、課税対象額を減らし、節税することができます。

金額が大きいのが「社会保険料控除」です。
社会保険(年金保険料や健康保険料)は納付するのが義務です。
そして納付した社会保険料は全額が所得控除として認められます。

健康保険は、退職後は在職していた企業の健康保険に任意継続制度で加入を続けているか、国民健康保険かどちらかで保険料を納めているでしょう。
年金も国民年金保険料を納付しているはずです。

社会保険料は減免が受けられることがありますが、手続きして減免などが認められるまでに納付していた保険料があれば、「社会保険料控除」として課税対象額から差し引けます。

例えば、2020年7月から12月の6カ月間、健康保険料月2万、国民年金保険料月1万6540円を納付していれば、総額(2万円×6カ月)+(1万6540円×6カ月)=31万8480円となります。
これが全額課税対象から外れます。
もし、所得税率が5%であれば、約32万円×5%=約1万5000円節税となります(概算です)。

退職後の健康保険料についてと、減免制度については過去に記事にしています。

コロナ禍で退職?健康保険には退職前に知っておく準備があります。
コロナ禍で生活が大きく変わる中、これから勤務先を退職する人が増えるかもしれません。企業に勤めているかどうかで健康保険が変わります。退職後の健康保険の選択肢は3つありますが、手続きの締切が14日以内や20日以内と早いです。退職する前から制度や...
コロナ対策もあり!国民健康保険料の軽減・減免制度
企業にお勤めしない場合、原則としてお住まいの地域の国民健康保険に加入します。保険料の額は自治体によって差はありますが、負担に感じる人も多いでしょう。しかし、国民健康保険には保険料を軽減・減免する制度があります。コロナ対策、失業、低所得者向け...

その他、「配偶者(特別)控除」「障害者控除」「寡婦控除」「ひとり親控除」など、人によっては当てはまる方もいらっしゃるかもしれません。
所得控除全般について説明している国税庁のページを挙げておきます↓。

【出典】国税庁:No.1100 所得控除のあらましhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1100.htm

ところで。所得控除の方がその年の普通の所得より大きい場合はどうするのでしょうか。ここで「普通の」というのは、在職時に貰っていた給与だとします(より正確に言えば総所得金額に分類されるものを指しています。退職金は分離課税なので含みません)。

例えば月20万円で6カ月働き、120万円の収入があったとします(在職時の源泉徴収税額は確定申告で精算するとします)。
給与所得控除55万円が差し引けるので課税対象となる所得は65万円。
それに対して所得控除が98万円だとします(例えば基礎控除48万円、社会保険料が在職時18万+退職後32万円)。
65万円から98万円の所得控除は引ききれません。

このように普通の所得(総所得金額)から所得控除が引ききれない場合、最終的には分離課税である退職所得から引くことになっています。

(所得控除の順序)
第八十七条 雑損控除と医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除又は基礎控除とを行う場合には、まず雑損控除を行うものとする。
2 前項の控除をすべき金額は、総所得金額、山林所得金額又は退職所得金額から順次控除する。
所得税法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000033

以下に国税庁の「確定申告をすれば税金が戻る方」というページを記載しますが、この中の④の「退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になる」ケースがこれだと思います。

【出典】国税庁:確定申告をすれば税金が戻る方https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/b/01/1_07.htm

3.3 退職所得についての税金を納めすぎていた可能性

1で述べたように、退職金そのものは、「退職所得の受給に関する申告書」を勤め先企業に提出することで正確な金額での納税が完結しているのが通常です。

「申告書」を提出していなければ、退職金の金額に一律20.42%の税率を掛けた税額が源泉徴収されることとなっています。
↑このような規定があるということは、これまでもそういうケースがあったのでしょう。
ましてや2020年はコロナ禍の真っただ中。
ごたごたに紛れて、出すべき申告書を出さずに後者の20.42%で源泉徴収されてしまっているケースが例年より多いかもしれません。

申告書を出しているかどうかで源泉徴収額は大きく違ってくることが多いです。

「申告書」を出した時の納税額をまず計算してみましょう。

退職金の税の計算では、まず退職金から一定の退職所得控除を差し引きます。
勤続年数が20年以下では40万円×勤続年数です(20年を超えている場合は「800万円+70万円×(勤続年数ー20年))。

そして更に!課税退職となる退職所得は、「退職金 - 退職所得控除額」を 1 / 2にします!

例えば勤続10年で500万円の退職金が支払われた場合、退職所得控除は400万円です。
500万円-400万円=100万円ですが、退職所得となるのはその2分の1の50万円です。
この金額に掛かる税率は5%ですから納税額は2万5000万円です。
復興特別所得税を加えると×1.021で2万5525円です。

【出典】国税庁:退職金と税https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm 

ところが、「申告書」を出していない場合、退職金そのものに20.42%の税率が掛けられ、納税額は500万円×20.42%=102万1000円となってしまいます。
このケースでは100万円近く納めすぎになってしまうことになります。

【出典】国税庁:[手続名]退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_37.htm

バタバタと退職してしまって、退職金の課税関係があやふやな方は必要な申告書を出したか確認しましょう!

4.期限はいつまで?

2021年(令和3年)確定申告期間は本来2月 16 日~3月 15 日でしたが、コロナ対策の緊急事態宣言により、2021年4月 15 日(木)まで延長されています!

また、還付を受けるだけなら(納税することがないなら)「退職した翌年以降5年以内」です。下記の国税庁サイトにそう記載されています↓。

【出典】国税庁:No.1910 中途退職で年末調整を受けていないときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1910.htm

↑上記の国税庁サイトでも(5年以内でいいけれども)「申告に必要な添付書類がそろい次第早めに行うことをお勧めします」とあります。

私からもお勧めしますw
実は、私、2021年2月現在、2015(平成27)年の確定申告の訂正をしてるんですが(「更正の請求」と言います)、
いやー訂正は早い方がいいです。事実関係の記憶がごっちゃになるし、書類も紛失しがちです。
私が今現在、「えーとあの年のこれはああで、それを証明する書類がこれとこれで……」とちょっと苦戦しています。
記憶と書類がしっかり残っているうちに行う方が絶対にいいです!

まとめ

年の途中で退職した場合。退職金そのものについては申告書を出すことで確定申告は不要です。

しかし、12月までに再就職していない場合、年末調整をしてくれる会社がありません。

ですから、再就職していない人は確定申告が必要ですし、以下の3つの可能性があるので還付が受けられることがあります。

その3つは「在職中の源泉徴収税額が納めすぎだった」「社会保険料控除など所得控除が反映されていない」「申告書を提出していないために退職金からの税金が納めすぎになっている」です。

2021年の確定申告期限は4月15日ですが、還付を受けるだけなら5年以内です。ただ、記憶と書類が混乱しないうちに早いうちにした方がいい!ですよ(私が今現在実感中です……)!

コメント

タイトルとURLをコピーしました