「老後2000万」類似記事を書いたライターの本音とアナタの金額の考え方

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「金融庁によると老後資金が2000万円必要」と話題になりました。実は私Webライターとして類似記事を書いたことがあります。内容としてはありふれたものなのですが…。ただこれは一般論です。どのような要因で数字は上下しうるでしょうか。

1. 根拠となる資料はオーソドックス

「老後資金に〇〇万円必要」という情報は、2019年の金融庁の問題以前から、紙媒体やネット記事にあふれかえっていました。

かくいう私もライターとしての仕事でコノ手の記事を1本書いています。
ええと。去年2018年の話です。
この時点で類似の記事は多数あり、参考記事には事欠かない状態でした。

モチロン参考にしただけで、パクリもコピペもしていません。
っていうか「パクリ・コピペする必要もなかった」のです。

多くの記事が明らかに根拠としているのは、総務省の家計調査・厚生労働省の発表する年金額などです。
今回の金融庁のレポートでもそうです。

【出典】金融庁 金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html

大雑把に言えば。
総務省の家計調査から見て老夫婦の家計支出は27万円前後
厚労省の数字から老夫婦が得られる年金収入は22万円前後
月々5万円の不足がでることになります。

この月5万円の不足が65歳から95歳まで続くとすると。
月5万×12カ月×30年=1800万円で概ね2000万円となります。
一次資料のデータを単純に加工するとこうなります。

【出典】総務省「家計調査」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2018.pdf
【出典】厚生労働省「平成 31 年度の年金額改定についてお知らせします」
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/000468259.pdf

私を含む多くのライターが参考にするデータに基づいており、この数字自体はオーソドックスな見解なんですよ…。

前々から関心のある人には周知の事実なので…。
「今回、騒ぎすぎなのでは?」というのもホンネです。

確かに「老後資金ってなにそれおいしいの」な人もいますが(私の友人に居ました)。
金額の大小はともかく、老後にまとまった資金は必要であるという事実は前々から指摘されていました。
FPとしてのホンネを申し上げると、今回の一件で「え?老後資金って要るの?」という驚き方をする人は少しナイーブかなあ…。

もっとも、「なんでここまで年金財政が悪化したのか」「そもそも少子高齢化をどうにかするべきだ」というマクロな議論は必要だと思いますよ。
「(制度が)100年安心」というキャッチフレーズも誤解を招くものだったと思いますし。

2. 「一般論」が独り歩きしている

一方で、金融庁や政府・政権に対しても「あー、伝え方が上手くないなあ」と思うのもホンネです。

マスコミなどで批判されているように「庶民感覚がない」ということでもありますし。
「読み手のニーズ」に寄り添っていないということです。

まず、このレポートにあるように、老後資金についてきちんと考える人が多くないという現実があります。

「老後資金なにそれおいしいの」的な人から、「まとまった資金は要るらしいけどいくらか分からない」「どう計算したらいいの?」な人まで、問題意識に濃淡はあるにしても。

このレポートの趣旨だって、「老後資金考えたことない人は、これから考えようね」というものです。

で。
「老後資金を明確に考えた経験がない」人が、老後資金について聞かされて、まず関心を持つこと。
それが「自分の場合の金額」です

2000万円というのはあくまで一般論であり。
レポート中にだって、何度も「ライフスタイルで異なる」「あくまで平均である」旨述べられています。
この騒ぎで、関係者から「あくまで一般論だって言ってるのに…」という嘆き節も聞こえてきます。

しかしながら。
その一般論に挙げられている数字が「月5万円ゆえに2000万」単独なのがマズかった…。

一般論として2000万円(根拠となる月5万円)は繰り返し登場するのですが。
読み手が知りたい「どういう人ならどう違うの?」「平均からずれるとどうなるの?」という点には具体的な数字はありません。

このレポートの性格自体は、「アナタはこんだけ不足しますよ」を正確に言い当てるのが主目的ではなく、「千万単位の老後資金が必要かもしれないので計画的に用意しましょうね」と啓発するものですので…。

レポートの性格上、一般論を軽く述べて、後はNISAや個人型確定拠出年金(iDeCo)などの説明に移るのはある程度仕方ないのですが…。

読者のニーズは「一般論ではなく自分の場合」なのに。
このレポートは危機感を抱かせる一方で、その読者のニーズには答えていないものになってしまっていると思います。

ここが拙速だったかなあ、と。

まあ、ライター業もしている私としては「読者ニーズを見誤ったなあ」という評価もホンネです。

3.「一般論」ではない「アナタの場合」はどうなる?

金融庁のレポートでも「それぞれの国民・家庭が自分の老後資金を意識するように」と呼びかけており、金融リテラシーを持つことやアドバイザーを持つことを推奨しています。

これはその通りで、ホント人それぞれなので、ご自分で知識を持って、信頼できるアドバイザーを見つけることが重要だと私も思います。

手前味噌ですが、FPに相談する文化が日本に根付くべきだと思います。

個別の金額は、それぞれご自身やFPのコンサルティングで把握するとして。

ご自身の老後資金が、今回の金融庁のレポートの2000万円より上振れする要因と、下振れする要因を挙げたいと思います。

3.1 上振れするケース(2000万より高くなる?)

2000万円より老後資金が高くなるケースとして以下のような場合があります。

3.1.1 自営業の場合

この2000万円と言う数字は、厚生年金を支給される世帯の話なので、基礎年金のみの自営業では、年金以外に備えなければならない金額は大きくなります。

月に必要な生活費が27万で基礎年金が夫婦合計で13万円だとすると、月14万円の不足が出ることになります(この仮定のもとでは)。
すると、老後資金は14万円×12カ月×30年=5040万円となります。

ただ、悲観しすぎないよう申し上げておきますが、自営だと定年がありません。
人それぞれですが、事業が上手く行っていれば、サラリーマンより収入が大きい人もいます。

サラリーマンにはないアドバンテージをいかに活かして、資金を貯めるか今後考えていくことが大事です
国民年金基金とか小規模共済とか自営業ならではの老後資金の作り方もありますから、相談されたらFPだって張り切りますよ!

3.1.2 住宅費が必要な場合

2000万円の根拠となる総務省の家計調査は、持ち家かどうかを問わずに集計した結果です。
老後に住宅の購入を考える場合は、別途考える必要があります。

これも悲観しないよう申し添えておくと、子どもがいなければ大きな住居も必要ありません
住環境や通学の便も気にしなくて良くなります。

2階建ての一軒家とか階段の上り下りだってしんどいですよ。
掃除だって億劫でしょうし(アラフィフの私だって家の掃除面倒ですもん。ズボラなものでw)
こじんまりした家の方が住むのにラクと言えるでしょう。

3.1.3 介護費用が必要な場合

総務省の家計調査は介護費用を考慮していませんので、これも別途考える必要はあります。

「どれくらいかかるの?」については、個人差がとても大きいのでなんとも言いづらいですが。

データとしては、生命保険文化センターが行った調査があります。
一時的費用(住宅リフォームや介護用ベッド購入など)平均69万円です。
毎月の費用の平均は7.8万円で、期間の平均は4年7ケ月です。

7.8万円×4年7ケ月=約425万円です。一時費用69万円と合わせて約494万円です。

【出典】生命保険文化センター:介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/4.html

元気な方は80過ぎても矍鑠としてらっしゃいますが…。
できれば予算を計上した方が良いかと思います。

3.1.4 生活費が多くかかる場合

2000万円の算定根拠となる支出はあくまで平均です。

平均よりゆとりある生活をしたい場合はどうでしょうか。

生命保険文化センターが、「ゆとりある生活に必要だと思う金額は?」という意識調査をしています。
その回答を平均すると、老後ゆとりある生活を送るには34.9万円という結果がでています

【出典】生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」
https://www.jili.or.jp/research/report/chousa10th.html

あくまで意識調査の平均値なので参考値です。
また、65歳時点で旅行や外食が好きでも、80歳を超えても同じように精力的に外に行くかは分かりません。
この点でも人それぞれですね…。

3.2 下振れするケース(2000万より低くなる?)

老後資金が2000万円より低くなりうるケースは以下のようなものが考えられます。

3.2.1 生活費がかからない場合

2000万円の計算の仕方は、毎月〇万円×12カ月×30年であり、この〇の部分が5万円として計算していたのでしたね。

単純に考えて、生活費が月1万違うと、12×30=360万円数字が変わってきます

ゆとりある生活を送るなら上振れする要因となりますが。
月1万、あるいは年間十万円単位の支出のスリム化をすれば下振れします。

例えば自家用車は維持費だけでも十万単位の出費があります。
一方で、高齢者の免許返上を促すため、自治体が公共交通機関の無料パスを配布するなどしています。
自家用車の保有にこだわらなければ、支出のスリム化は十分可能です。

シェアリングエコノミーやサブスクリプション(一定の料金でサービス使い放題)などの時代の変化にうまく乗れば…
節約生活をラクラク実行できる可能性はあります。

3.2.2 妻の厚生年金がある場合

2000万円の根拠は、年金収入については、厚生年金が支給される夫と専業主婦の妻のモデル世帯でした。

妻に厚生年金があれば、収入の額は大きくなり、収支の差額は縮まります

今では若い頃に全く働いたことのない妻というケースも珍しいでしょう。
また、パート就労にも厚生年金が適用されつつありますから、今後妻が働くことで年金収入を増やすことも可能です。

3.3.3 働き続ける場合

上では妻の場合について述べましたが、夫婦どちらか、両方が働いて収入を得れば、老後資金の必要額は下がります。

企業では65歳まで雇用を維持するよう義務付けられています。
また、上で述べたようにもともと自営業だと定年がないので働きやすい面があります。

今サラリーマンな人も、特技や資格を活かして起業やフリーランスという働き方もアリかもしれません。

開業にリスクを伴うような起業は年齢的に避けるべきですが、ネット上で開業するとかなら費用をかけることなく起業できるのではないでしょうか。

高齢になると、いつまで勤務先まで通勤できる体力があるかもわかりません。
高齢でも収入が得られるよう、在宅で働ける道すじをつけておくのも今後大事ではないかと思います。

4.「じゃあ、投資をすべき?」について簡単に

金融庁のレポートが主張する「資産寿命を考えてNISAや個人型確定拠出年金(iDeCo)等の投資をしましょう」という問題。

話は長くなるので、結論だけ簡単に。

私から申し上げるとすれば「焦って本格始動することもないけど、準備運動はお早めに」です。

投資には制度上の元本保証はないので、損をするリスクはつきまといます。
損得の値動きの影響を小さくするには、投資先と投資のタイミングを分散することが有効だとされています。
だから、「長期で積立投信を」という金融庁のレポートの主張も十分まっとうなものです。

一番やらない方がいいのは「投資?じゃあ、今あるお金をどーんと○○に」と慌てて一点張りすることです。

NISAとは何か(一般と積立とジュニアの3種がありますよ)。
個人型確定拠出年金(iDeCo)でお得になるとはどういう意味か。
投資信託は他の投資商品(株、FXや不動産)とはどう違うか。
投資信託にもいろんな種類があるが、どれがどのような性質を持つのか。

↑長期積立投資をするにも、前提となる知識は必要です。
(当ブログでも中立なFPの立場から情報発信して行きますのでご覧くださいね)

口座を具体的にどこの金融機関(証券会社など)で開設するか、手数料や利便性も比較検討したいですしね。

今すぐ多額のお金を動かす必要はありませんし、すべきでもありません
ただ、放っておくといつまでも知識やスキルが身につかないままです。

ある経済評論家のご意見では「デフレ下なら現金で預金するのが最適」とあり、確かにデフレ下ではそうなのですが。
未来のことは誰にもわかりません。
インフレになったときにすぐ動けるよう、準備運動には取り掛かっておきましょう。

まとめ

2019年に話題となった2000万円問題。一般論としてはオーソドックスな見解です。

ただ、あくまで一般論であり「じゃあ自分は?」という個別の読者ニーズには十分こたえていない内容でした。2000万円より上振れするか下振れするか、考えられる要因は上記の通りです。

上でも述べましたが前提となる1カ月の不足額が1万円違うだけで360万円異なります。また、65歳での消費支出と80歳以上での消費支出も違うでしょう。そもそも私たちの「老後」の社会はどうなっているでしょうか。

「来年の事を言えば鬼が笑う」とも言います。確かに百万、千万単位の老後資金を用意すべきではありますが、一般論に振り回されることはありません。冷静に自分の必要額を人生の節目に意識し、資金計画を立てることが大事です

当ブログの目的の一つに「FPを身近に感じて欲しい」というものもあります。
気軽に相談できるFPがいることが、社会にとって必要となるのではないかと思っています。

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