「凪のお暇」の失業保険(雇用保険)はいくら?リアルに考えてみた

離職者へのパンフレット

漫画「凪のお暇」がドラマにもなり、話題です。とてもリアル!心理描写も「あるある」と共感しまくりだし、節約術も使えそう。そして、雇用保険の制度の説明も正確なんですが…ただ、凪が貰っている具体的な金額は謎なまま。この記事ではここを追求してみます!

1. 凪は「一般の離職者」として「基本手当」を受給中?

「凪のお暇」では、28歳の会社勤めの女性「凪」が、自分を見つめなおすために、仕事を辞めて「お暇」生活をスタートする話です。

これだけ聞くと「はあ?いい歳して自分探し?甘えてんじゃないの?」と思われるかもしれません。

ですが!

作者のコナリミサトさんの描写の上手さか、
たった1話分読んだだけでも「凪ちゃん、ちょっと休みなはれ」と言いたくなる説得力。

対人関係で過剰に空気を読みまくり、自分自身も見失っている凪。
具体的な病名が付くような状態じゃないけど、作風によってはサイコホラーにも展開しそうなくらい病んでます。

社内恋愛で付き合ってる彼氏もモラハラ男。
凪にとって唯一、自分が幸せだと思える「カード」だった彼氏の暴言で、とうとう会社内で、過呼吸で倒れてしまいます。

で、これをきっかけに退社へ。

2. 凪は自己都合による退職(一般の離職者)

第5話目で、凪がハローワークに失業保険をもらう手続きに出かけます。

漫画では「失業保険」と表現されています。
一般にもそう呼ばれることが多いので、コナリミサトさんもそれに倣ったのでしょう。

正確には雇用保険の中の求職者給付の基本手当ということになります。

この失業保険を受けるための手続きに出かける場面。
とても実用的な内容で、持参するものが絵付きで紹介されてますw。

会社から送られてくる離職票、雇用保険被保険者証、印鑑、通帳、身分証明書、自分の写真が挙げられています。

2.1 凪が一般離職者と分かる場面

凪が手続きしていると、窓口のハローワークの職員から「3カ月の給付制限がある」と説明されています。

このことから、凪は一般の離職者として自己都合退職したものとして扱われていることが分かります。(自己都合退職には3カ月の給付制限があるので)。

一般の離職者であるということは、後で述べる特定理由離職者や特定受給資格者でないということです。

自己都合で退職したという扱いなので、失業手当(雇用保険の基本手当)が貰える日数は、年齢にかかわらず、被保険者期間に応じて決まります
被保険者期間が1年未満はもらえません
10年未満で90日、10年以上20年未満で120日分、20年以上で150日分です

凪は現在28歳。
大学新卒で入社しているようなので、被保険者期間は10年未満でしょう。
(大学新卒入社以外の事情があれば、エリート社員の彼氏からのモラハラの材料になってたと思われるので)
よって、失業保険は90日分支給されることになります。

2.2 病気やパワハラが理由なら一般よりお得ですが…

失業保険は手続き行ったらすぐ貰えるものではありません。
「凪のお暇」でも説明されていました。

7日間は待期期間があります。
これは全ての受給資格者にあてはまります。

正当な事由のない自己都合退社には、これに加えて3カ月間の給付制限期間があります。

上記のように凪はコレに該当しているようです。
凪の心情の一面としては、必ずしも好きで辞めたわけじゃないんですけどね…。
「お暇が必要だから」しているのであって。

自己都合でも正当な事由があれば、3カ月の給付制限がないこともあります
体力の不足、心身の障害、疾病などです。

ただ、凪の場合は一度過呼吸で倒れただけなので、病気というパターンにまではならないのでしょう。

もっとも。
給付制限を免れたいからといって、心身を本格的に病気にすることはありません。
壊れる前に辞めて良かったですよ、凪ちゃん。

3カ月間の給付制限が付かないケースは、他にも契約社員が契約を更新してもらえなかった場合もあります。
契約社員のケースと、自己都合だけど正当な理由があるというケースを「特定理由退職者」といいます。

また、自己都合ではなく、倒産や解雇など会社都合で離職した人は「特定受給資格者」と呼ばれます。

パワハラが酷い場合は、自分で辞表を書いて(書かされて)自己都合退職しても、ハローワークに相談することで会社都合として扱われる可能性もあります

ただ、凪の場合は、凪がおとなしそうなのをいいことに上司が嵩に来ているという面はあるにせよ、まあ日常の範囲なのでパワハラ認定は難しいでしょう。

「凪のお暇」のテーマは、「日常の中で、舐められやすいキャラへ起こる、周囲の(無意識な)高圧的な無神経さと、それと戦い始めた凪の姿」だと思うので。
物語の中での凪の失業保険も、一般離職者の自己都合退職という扱いなのだと思います
(でないと、「心の病との闘病」や「社会悪との対決」とお話のトーンが変わってきますしね)

3. で?漫画にはないけど凪はいくら貰っているの?

この漫画、ハローワークに持参するものや、待期期間・給付制限の説明は具体的ですが。
ぶっちゃけ凪がいくら貰えるのかは描かれていません。

描写不足というより、そこまで細かく設定すると、話がうまく動かないというストーリー上の問題だと思います。
これから、ワタクシがFPとして凪の懐事情の解明を試みてみますがw
これ以上具体的にイメージが固定すると今後の漫画の続きが楽しめない人は、読まないでくださいねw

3.1 凪が受け取ることができる失業保険の概要

漫画の中では「貰っていた給料の50%~80%が貰える」とあるだけです。

正確に言うと。
「離職日前1年間のうち最後の6カ月間に支払われた賃金総額を180で割った額=賃金日額」の50%から80%が日額としてもらえます

この賃金日額の算定には残業手当や交通費も含みます(ボーナスは含みません)

凪は、おとなしい性格につけこまれて残業も押し付けられていましたが…。
失業保険にはプラスに働くことになります。

3.2 そもそも凪のお給料っていくら?

ここで、本質的な問題。
凪っていくら給与をもらっていたのでしょうか?

これが分かるのが、第5話の初めに出てくる「住民税約15万円」という描写です。
ここからざっくり推測していきます。

住民税は課税所得の10%です。
ということは…凪の課税所得は約150万円。

課税所得は、収入からいろいろな控除を差し引かれて決まります。

凪は給与所得者なので給与所得控除があります。
給与所得控除は給与収入によって異なりますが。
課税所得が150万円なら、「180万円超360万円以下」の区分だと考えられます。
すると、給与所得控除は「収入金額×30%+18万円」です。

他に凪が受けられる控除は基礎控除社会保険料控除です。

基礎控除は2019年現在38万円です(2020年から48万円に変わります)。

社会保険料は、凪が負担している年金保険料や健康保険料、それから雇用保険料などです。
企業によって率は異なりますが、FPのテキストでは、概算する際は15%前後で考えることとされています。

凪の給与収入をXとして、それぞれの社会控除を差し引いた額が=150万円となるという一次方程式を立てると…。
凪の年収はおそらく374万円だろうということになります。

もちろん凪と同年齢でもっと貰っている人もたくさんいるでしょうし。
この金額に及ばない人もたくさんいるでしょう。

こうして凪の年収が明確過ぎると、読者の「あ、自分と違う」感を強調してしまうのかな…と思います。
コモリミサトさんも、それで言及を避けてらっしゃるのかもしれません。

3.3 凪の失業保険の具体額

失業保険の日額を決めるのにボーナスは含めないんでしたよね。

ボーナスは企業や業種、業績でホントさまざまですが。
国税庁の調査では、年収400万円以下の女性のボーナスは約56万円です。
【出典】国税庁:標本調査 平成30年民間給与実態統計調査結果 『第9表 業種別及び給与階級別の給与所得者数・給与額』
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2016/pdf/09.pdf

凪がボーナスをどのタイミングでいくら貰ったかによりますが、半年に1度、28万円ずつだとします。

すると。
凪が退職する直前の6カ月間に貰っていた賃金総額は159万円です。

これを180で割ると約8833円となります。

基本手当の計算式は、厚労省のサイトによれば。
退職日に30歳未満の場合、賃金日額をwとすると、 (-3×wの2乗 + 70,720×w) / 71,000で計算されます。
【出典】厚生労働省:基本手当日額の計算式及び金額
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken/pdf/kihonteate.pdf

これに当てはめると、計算結果は約5500円となりました。
凪の場合はこれが90日分支給されます(自己都合退職で勤続10年未満)
総額で49万5000円ですね。

凪のこれまでの貯蓄や退職金などと合わせて、うーん…。
経済的には「お暇」をいつまでも続けるわけにはいかないですね…。

2019年9月現在、発行されているコミックスでは、凪はアルバイトをしています。
アルバイトと雇用保険の基本手当との関係も微妙なんですが。
ハローワークと相談の上、一定の条件を満たせば、アルバイト収入のある日の分の失業保険を先延ばしにできる可能性もあります。

最新刊では、就職への焦りも見えましたが。
凪がどう生きたいのか、それを挫こうとする相手とどう戦うのか、という根本が解決しておらず、当面お暇は続きそうです。

4. ハローワークの雰囲気は…?

「凪のお暇」で描写されているハローワークの雰囲気は。

受付に居る凪が放ったらかしにされたり、坂本さん(凪と仲良くなる人)に高圧的だったり、凪曰く「アクのある」対応でしたね。

私自身は普通のハローワークに行った経験はないのですが…(公務員だったので、雇用保険に入ってなかったんです)。

子どもが幼稚園に入った時点で、女性就労を後押しする「マザーズジョブカフェ」という京都府の窓口に相談に行ったことがあります。
キャリアカウンセラー的な立場の人との面談予約を入れて、いかにもキャリアウーマンですといった感じの30代後半の専門家っぽい人とお話しましたが…。

私が付きたい職業として、家庭教師とか塾の講師とか考えて申し出てみたんですけれど(私は無駄に高学歴なので)。
その人には「お子さんが小さいのに夜出かけるお仕事はおススメできませんね」とにこやかに否定されて終わりました。
だからって、建設的な提案もなく…。

今振り返っても、なんだかなあ?とモヤモヤした気持ちはあります。

現在の私はファイナンシャルプランナーとして、人様に情報を提供できるよう精進しているわけですし(まだまだ未熟ですが)。
育児を振り返っても、出来の悪い我が子の中学受験を、中堅校とは言え第一志望校まで伴走しましたよ。
人に何かをお教えする仕事、好きだし頑張れそうだって思うんですけどね。
家庭教師や塾講師も、不登校のお子さん向けにいろんな形でニーズはありそうです。

「○○だからダメ」ではなく、講師業全般に可能性を広げてみるとか、昼間でも可能性はないのかとか、そういうことは考えてくれないんですよね…。

とーってもにこやかですが、営業スマイルという感じで、「キャリアカウンセリングをしている自分」を演じているという印象も受けました。

もう10年以上も前ですし、今は改善されていると期待したいですが。

凪や坂本さんほど、はっきりと不快になったわけでない分マシだったのかもしれません。

まとめ

今を生きる女性の「あるある」を具体的に盛り込んだ、とーっても興味深い漫画「凪のお暇」。
凪のお暇の描写に合わせて、雇用保険制度の概略をここでもざっと見てみました。
そして
作中で描かれてなかった失業保険について具体的に考察してみました。

この制度、この基本手当で凪はやっていけるかどうか。
凪は節約生活に慣れているので、経済面のことは頑張ってこなせていけそうです。

その間に、舐められやすい、モラハラを受けやすい、毒親から支配されているという人生の課題を解決していくことになりそうです。

私が体験した「キャリアカウンセリング」的な面接があまり役に立たなかったように(今は改善されているかもしれませんが)、凪ちゃんもハローワークや転職エージェントではなく、自分で自分の人生・職業生活を見つけ出すのでしょう。

そろそろ終盤に入ってきたであろう今後の展開が楽しみです。

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